研究開発裏話

研究・開発の原点は「なければつくればいい」。

昭和40年代、コーヒーエキスは市場に流通していなかった時代で、ハニー珈琲もまだ、コーヒー豆を販売していた時代だった。そんな中、社長の中嶋英貴は飲料メーカーにコーヒー豆を卸していたとき、ふと、直感で「これからはコーヒーエキスの時代だ」と強く思い始めるようになる。コーヒー豆は、メーカーが仕入れた際、すぐには使えないし、抽出後はコーヒー豆が廃棄物となり処理も必要だ。メーカー側にすれば作業効率が悪くコストもかかる、作業短縮できる商品はないか?と考えたとき、すぐに使えて廃棄の必要のない液体が思い浮かんだ。これならムダもなく、メーカーにも喜んでもらえるに違いない、そう中嶋は確信した。

エバポレーター濃縮機

さっそく中嶋はコーヒーエキスの開発に着手する。コーヒー豆を水につけ込んだり、真空状態でつけ込んだり、毎日実験を繰り返すうちにやがてエバポレーター濃縮機に辿り着く。これは、コーヒーエキス、コーヒーペーストの加工品の製造ができる真空濃縮機だ。芸大出身で工業デザインを専攻していた中嶋は、次に粉の量を考え、ラインの長さ、直径などを試行錯誤しながら細部までこだわり、自らでカラム抽出機を設計したのだ。パーツごとに3社に分けて機器の製造を発注し、念願の1号機が完成した。

「これでメーカーに喜んでもらえる商品ができる!」と、張り切ってコーヒーエキスを抽出し営業するも液状という形状が当時はなかなか受け入れてもらえず苦戦の毎日を送ることになる。しかし、中嶋はあきらめなかった。粘り強く営業を続けていたある日のこと、コーヒー豆の販売で取引のあった大手メーカーから注文を受けることに。すぐに使えることにメリットを感じてコーヒーエキスを導入するとのことだった。中嶋の思惑が的中した。これを機に生産が追いつかないほど注文を受け、コーヒーエキスという存在を市場に知らしめることになったのだ。
「なければつくればいい」、その発想があったからこそコーヒーエキスが生まれ世に知れ渡ることになったのだ。今もハニー珈琲の研究・開発の原点には、この想いが脈々と流れている、「なければ自分たちでつくればいいだけのことである」と。

 

製品から新たな原料を生み出す、循環型製造システム。

貯蔵タンク

コーヒーエキスが順調に売れていくと同時に、社内では次なる研究開発が進められていた。カラム抽出装置とハニーオリジナルのオイル機だ。カラム抽出装置は、蒸気を使ってコーヒーエキスとコーヒーフレーバーを製造する装置で、中嶋による設計のオリジナル装置だ。この装置は本格的なコーヒーエキスを抽出する装置という目的があるため、他社のコーヒーエキスとの差別化を図るため味と香りの精度を上げる研究が日々進められていた。
まず注目したのは、使用する豆のカットサイズ。カットの大きさが味を大きく左右するからだ。細かすぎるとパイプにつまりやすくなり、圧力が上がり不要な成分を含んで雑味が増す。そのためコーヒー豆のサイズをいろいろと変えて抽出を試みた結果、豆を1/8にカットすることが良質な成分だけを抽出することができ、嫌みのないコーヒーエキスを取り出せることがわかった。
一方、ハニーオリジナルのオイル機は、コーヒー豆に含まれるわずかなオイルを絞り出しながら、深い香りのフレーバーを取り出す。これも日本には3台しかないハニー珈琲独自のもの。このオイル機が作り出すコーヒーオイルを使ってコーヒーフレーバーを製造。一貫した生産体制が確立され、ムダなくコストを抑えたコーヒーエキスを生み出すことに成功した。
それだけではない。製造メーカーに与えられた義務のひとつに製造後のコーヒー豆の廃棄処理があるが、ハニー珈琲はこの廃棄処理の研究開発にも力を注いでいる。ハニー珈琲のコーヒーカスの大きな粒子を活かして、現在、土壌改良材として再利用されている。
「土から生まれたものは土に帰す」という想いが循環型の製造システムの開発に導いたと言えるだろう。

土から生まれたものは土に帰す

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小ロット生産を活かして、メーカーの要望に応える。

ひとくちに研究開発と言っても2種類のタイプがある。1つは、前述したような自社の課題を解決するソリューション型の研究開発。もう1つは、飲料メーカーなどのニーズを製品化するための営業開発。ハニー珈琲の抽出機は大手メーカーの抽出機器よりも小ぶりであるため、その特性をいかし開発サンプルの作成を行っている。メーカー側の大型抽出機を使ってサンプルをつくるとなると作業効率も悪くコストもかかるが、ハニー珈琲なら小ロットの製造が可能なため濃度や糖度など調合レシピを微調整しながら数種類のサンプルを作って提案することができる。専任の営業開発担当者が打ち合わせの場でお客さまのニーズを取り入れたレシピをその場で作成して提案する。飲料メーカーの季節商品、乳業メーカー、コンビニエンスストア、製菓メーカーなどのオリジナル商品やPB商品などさまざまなサンプル作成も日々の重要な業務である。「メーカーの要望に応える」という企業姿勢と体制で、日々、研究開発に真摯に取り組んでいる。

研究開発打ち合わせ風景

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公表できない開発案件がいろいろと進行中。

打ち合わせ中

中嶋は語る「コーヒーエキスは無限の可能性を秘めている」と。現在、ハニー珈琲ではコーヒーのエキス、フレーバー、オイルを中心に、紅茶、茶葉類、ハーブやスパイスなど食べるアロマの研究開発も行っている。また、コーヒー豆のカスを使ったリサイクルの共同の研究開発も進行中。牧場や農家ではハニー珈琲のコーヒー豆のカスで牛の糞尿を消臭しながら肥料を作り、販売している。現在もさまざまな地域で土壌改良剤の研究が行われ、実用化に向けて動いている。
今回、滋賀への移転によりこれらの研究開発を実証する場を設ける予定だ。工場の横の敷地に畑を作り、そこでリサイクルした土壌改良剤の成果の発表や研究を進める予定だ。「人を驚かせたい、人に喜んでもらいたい」、そんなユニークな精神がハニー珈琲の発想力豊かな製品を生み出す原動力になっている。まだまだ可能性を秘めたコーヒーエキス、フレーバー、オイル、ペースト、そして、新たに加わった紅茶やその他茶類、ハーブやスパイス類のエキスやアロマなど、その全ての可能性を広げ、価値の創造に、これからも努めていくつもりだ。